【書評】”破るべき常識”はどこにあるのか?「今、本当にすべきこと」が分かる”働き方”の本!『トップ1%に上り詰めたいなら、”20代”は残業するな』(山口周著)
今回紹介する本は『トップ1%に上り詰めたいなら、”20代”は残業するな』(山口周著)です。
著者の山口周さんは20代を電通で、30代をボストン・コンサルティンググループなどの米国の戦略系コンサルティングファームで過ごした後、現在は人材・組織開発を専門に行うコーン・フェリー・ヘイグループでシニア・パートナーとして働いております。
山口さんが本書で提起しているのは、”20代で特に意識しておくべき働き方”です。
20代は、これから会社などで働くにおいて、基礎となるべき考え方を身に着けるべき時期です。著者も電通に入社当初は「仕事ができない」と社内でも低い評価でした。しかし、自分の働き方を見出す中で成果を出せるようになり、どこに行っても通用するキャリアを形成するようになりました。
そんな著者が提唱する”20代で特に意識しておくべき働き方”とはどのようなものか?
本書の中で気になった箇所、そして、本書を読んだ感想を以下に掲載いたします。
Contents
「20代は”残業”するな」の意味
「20代は”残業”するな」というタイトルがついている本書。タイトルだけを見ると、「ワークライフバランスを提唱している本なのかな?」と思うでしょう。
しかし、著者は本書で”ワークライフバランス”を提唱しているわけではありません。むしろ、本書の内容は”20代が実践するには厳しいもの”であるものがほとんどです。
では、なぜ著者は「20代は”残業”するな」と述べているのでしょうか?その意味は以下のように述べております。
最後に、本書のタイトルの後半部分「20代は”残業”するな」については、ドキッとされた方も多いかもしれませんね。これは決して、今はやりの「ワークライフバランスをとろう」などという主張ではありません。
いや、むしろ全く逆の考え方と言っていいでしょう。
ワークライフバランスという言葉は、「仕事」と「プライベート」の間に明確な一線を引いて、両者を「トレードオフ=両立できないもの」として扱う、という前提に立っています。
しかし、そのような考え方をしている限り、仕事はいつまでたっても「ツラいもの、できれば避けたいもの」でしかなく、結果として「幸福で実り豊かな仕事人生」など実現できるはずはありません。
そうではなく、むしろ生活全体を仕事と連携させる、プライベートの充実が仕事の成果につながるような両者の融合、いわば「ワークライフブレンド」とでもいうべき考え方が必要であり、であるからこそ「残業に逃げるな」と言っているのです。
「目の前の仕事に一生懸命に取り組むのはいいことだ」という世間的な常識を疑うこともなく、その仕事が社会にどんなインパクトを与えるのか、自分にどんな成長をもたらすのか、という見通しも持たず、無自覚に目の前の仕事に取り組む、そうしていれば高い評価をもらえるだろうと甘える-。
そういう知的に怠惰で依存的な態度を戒めるために「残業するな」といっているのです。
(山口周著『トップ1%に上り詰めたいなら、”20代”は残業するな』はじめにより)
流されるままに20代を終えるのはもったいない
しかし、20代は自分で仕事を選ぶことができません。このため、どうしても20代は上長に言われた通りに仕事を進めるようになります。
しかし、それは著者は「漂流する船のよう」と本書で述べております。
では、そんな状況で過ごす中で、どんなことが必要でしょうか?著者は「”自分という船”の船長になる気構えが必要」と述べております。
どのように行動すれば、どのような結果が出るのかが、およそ予測できた20世紀後半の時代に比較して、現在は非常に予測が難しく、変化の早い世の中になっています。
このような世界において、主体性もなく、漂流する船のように潮流に流されているだけでは、およそ自分が望ましいと考える目的地に到着することは難しいでしょう。
重要なのは「自分という船」の船長になる、という気構えを持つことです。
(中略)
いくつかある選択肢の中から何を選ぶかを迷いながら悩むというのは、自分がどのような価値観や感性を大事にしているかを内省する良い機会です。
自分という船の航路は、自分で選ぶ、という気概を持って、孤独の中でこれを突き詰めて考えてみましょう。
(山口周著『トップ1%に上り詰めたいなら、”20代”は残業するな』より P26~P28)
「スジの悪い仕事」に時間をとられるな
仕事には大きく分けて2つあります。それは、”スジの良い仕事”と”スジの悪い仕事”です。
では、それぞれどのような違いがあるのでしょうか?それら2つの仕事の違いの着眼点が以下に述べられております。
世の中には、一生懸命取り組むことによって、どんどん自分の人生の豊かさを増してくれる「スジの良い仕事」と、どんなに一生懸命に取り組んでも、自分の豊かさにつながらない「スジの悪い仕事」があります。
20代の自分は仕事を選べないので、仕事のスジの良し悪しなんて関係ない、と思われるかもしれませんが、それは間違いです。むしろ、自分で仕事が選べない立場だからこそ、この二つを見極めるようになるのが重要です。
では「スジの良い仕事」とは、どんな仕事なのでしょうか?
着眼点は二つだけです。
それは「成長につながるか」と「評価につながるか」です。
(山口周著『トップ1%に上り詰めたいなら、”20代”は残業するな』より P60~P61)
しかし、スジの悪い仕事をやらないといけないことも多々あります。そんなときはどうすればいいのでしょうか?著者は「個人の責任で仕事の中から”スジの良さ”を引き出すことが必要」と述べております。
前節では、「スジの良い仕事」と「スジの悪い仕事」を見極めて、「スジの悪い仕事」については、証エネルギーでちゃっちゃっとこなせ、という指摘をしました。
ここで注意して欲しい点が一つあります。それは、仕事の「スジの良い、悪い」を決めるのは自分自身である、ということです。
「スジの悪い仕事」は、成長の止まってしまった成熟産業において、新たな指針を打ち出せないダメなリーダーの元から大量に生み出される傾向があります。
つまり、今の日本企業には「スジの悪い仕事」が生まれる環境的な条件が十分すぎるほどに揃っているということです。
しかし、それらの環境要因だけに「スジの悪い仕事」が増加する要因を帰せしめることはできません。というのも、仕事の中から「スジの良さ」を引き出していくのは、最終的に個人の責任だからです。
(山口周著『トップ1%に上り詰めたいなら、”20代”は残業するな』より P63~P64)
運命の日は、今この瞬間にも訪れている
「人生を変える運命の日がやってくるかもしれない」……20代はそんなことを思いながら過ごすこともあるかと思います。
しかし、著者は「そんな運命の日はやってこない!」と述べております。なぜなら、「運命の日は”何気ないごく普通の一日”であることがほとんど」だからです。
だからこそ、「今日の一日を、丁寧に生きることが重要だ」と、著者は述べております。
人生を変えるような「運命の日」が、いつかやってくるのではないか、とぼんやり考えている人は少なくありません。ここで断言しておきますが、そんなことを考えていても、「運命の日」はやってきません。なぜなら、私たちにとって、ごく普通の毎日が「運命の日」だからです。よく「自分には来なかった」などとうそぶく中高年がいますが、本人が気づけなかった、それを意識できなかっただけで、何度も「運命の日」は本人の目の前を素通りしているのです。人生を変える「運命の日」は、何か特別なことが起こる日ではありません。
後から振り返れば、何気ないごく普通の一日であることがほとんどなのです。
(中略)
まずは何よりも、今日の一日を、丁寧に生きる。
自分の価値観や感性を大事にして、やるべきだと思うことをやり、やるべきでないと思うことから遠ざかる。そのような営みを繰り返す中で、何気ないごく普通の一日が、運命を変える「その日」に、やがてなるのです。
(山口周著『トップ1%に上り詰めたいなら、”20代”は残業するな』より P251~P253)
最後に
上記では詳しく紹介できませんでしたが、本書を丁寧に読むと、日本企業で働いてきた僕にとっては「実践するにはかなりハードルが高そうだな」と思うものが多々あります。著者も「本書のアドバイスを実践しようとすれば、それなりにストレスがかかることが想定される」と本書の”はじめに”にて述べております。なぜなら、本書に書かれている内容を実践しようとするならば、旧世代の方々と大きな摩擦を起こすことになるからです。
その一方で、我が国の働き方を見てみると、世界から見ると、かなり荒廃した状況となっております。
最終的には個人の責任ということになるので、判断はお任せしますが、一つだけ、ある事実を共有しておきたいと思います。
それは、様々な「働き方に関する常識」が共有され、実践されている我が国の労働環境は、世界的に見て「これ以下はない」というほどに荒廃している、という事実です。
細かい数字をここで列挙することは避けたいと思いますが、内閣府等政府による調査、あるいは現在、私が務めているコーン・フェリー・ヘイグループやギャラップ社等の民間企業による組織調査を俯瞰してみれば、我が国の労働意欲、勤労意欲は、おしなべて参加国中の最下位クラスであることがわかります。
つまり、「幸福で実り豊かなキャリア」という観点からは、我が国の労働環境は世界最低レベルと言っていいほどに悪いということです。
(山口周著『トップ1%に上り詰めたいなら、”20代”は残業するな』はじめにより)
”最後に”の冒頭でも述べているように、本書で提案している働き方は、日本企業の常識からすると、かなり異なるものです。そのため、それを実践することは、長く日本企業にいた会社員からすると、摩擦を引き起こすものであることが想像できます。
しかし、常識の範囲内で仕事をすることは、当然のことながら、常識の範囲内でキャリアや成果しか実現できません。”抜きん出る”ためには、どこかで常識破りをする必要があります。
では、どこで”常識破り”をするのか?その見極めは、非常に難しいものがあります。20代で「守るべき常識」と「破るべき常識」を見極めるのは、なかなか難しいと思います。そのため、本書のような「働き方において、”破るべき常識”はどこにあるのか?」を提示している本書は、20代が働き方を考えるに当たって、非常に参考になると思います。
そして、本書の最大の特徴は、「”仕事”と”プライベート”を明確な一線を引かず、むしろ”プライベートの充実が仕事の成果につながる働き方”」を提示しております。つまり、「結果にこだわる」という働き方です。
読むとなかなか厳しい内容が書かれている本ではありますが、「仕事を行うにあたり、今、本当にすべきことは何か?」が見えてくるはずです。
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