【書評】〆切を味方につければ仕事も人生も引き締まる!〆切をうまく付き合う仕事術!『〆切仕事術』(上阪徹著)
今回紹介する本は『〆切仕事術』(上阪徹著)です。
著者の上阪徹さんはブックライターの第一人者!これまでブックライターとして多くの著者の執筆や編集を行なってまいりました。また、ご自身も著者として多くの本を出版されております。
その上阪徹さんが仕事で誇ることは「フリーランスになって23年間、一度も〆切を破ったことがない!」ということです。これは本当に凄いことです!
以前、上阪さんの講演会に参加した際に、取材ノートを拝見したことがあるのですが、付箋だらけのノートに驚きました!上阪さんの仕事の進め方を見ていると、プロジェクト・マネジメントに通じるものがあります。
そんな上阪さんの仕事のエッセンスをまとめた本が本書『〆切仕事術』です。
本書で述べられている上阪さんの仕事術のポイント、そして、本書を読んだ感想を以下に掲載いたします。
Contents
最大のストレスは、状況の「ぼんやり」
〆切があるとプレッシャーを感じることがあるかと思います。
しかし、本当にプレッシャーを感じている理由は、「〆切は決まっているのに、どのように仕事を進めていけばいいのかがハッキリしない」からです。やるべきことがハッキリとわかっていれば、それを淡々と進めていけばいいだけ!それがハッキリりないから、気持ちが焦ってしまうのです。
〆切をめぐってストレスを感じている状況は、まさにこれではないかと私は感じています。やらないといけない。でも、何から始めるか、はっきりしない。どうやって〆切までのプロセスを進んでいくのかも、はっきり決まっていない。
だから、なかなか踏み出せない。そうこうしているうちに、時間はますますなくなる。ストレスはさらに高まる。
〆切のことを考えないようにする。しかし、そうすればするほど、〆切が気になる。頭の中から、なかなか〆切のことが離れない。なぜなら、いずれにしてもやらないといけないから・・・・・・。
要するに、〆切のために、具体的に何をするのかが定まっていない状態です。だから、こんなことになるのです。
(上阪徹著『〆切仕事術』より P43)
仕事を終えるまでの段取りと時間を見積もる
では、「ぼんやり」とした仕事の状況を「ハッキリ」と見えるようにするためにはどうすればいいのでしょうか?
それは、「仕事をタスクごとに分解し、タスクを並べてゴールまでのプロセスを組み立てる」ことです。プロジェクト・マネジメントでは”段階的詳細化”と言います。上阪さんの仕事の進め方も、この”段階的詳細化”の考え方のように思えます。
仕事を細かい”タスク”に分解することで、一つ一つの”やるべきこと”と”作業量”が見えるようになります。
インタビューの原稿を作るだけでも、これだけのプロセスがあります。そして、これらは数日かけて取り組むことになります。だから、それぞれ「取材準備」「取材ノートづくり」「構成」「執筆」「推敲」ごとに、自分で〆切を設定するのです。いつこれをやるのか、ということをはっきり定めてしまうということです。
そうすることで、最終的な〆切までに、どんなプロセスで、どんなタイムスケジュールで仕事を進めることになるか、理解することができます。
やるべきことをぼんやりさせることなく、はっきりさせてしまうということです。
(中略)
〆切を持っている、あらゆる仕事には、必ずその仕事を完遂するまでのプロセスがあるはずです。
そのプロセスをしっかり洗い出し、何をやるべきかを理解しておくだけでなく、いつそれぞれのプロセスをやるのか、〆切を設定しておくのです。
(上阪徹著『〆切仕事術』より P48~49)
やらないといけないことを「時間割」にしていく
会議やアポをスケジュール帳に書き込む方は多いと思います。
しかし、それ以外の仕事の予定をスケジュール帳に書き込まないことで、「いつ、何をやるのか?」が見えなくなります。その結果、「見積もった仕事を実際やり始めてみたら、期間内に終えることができないことが分かった!」ということが発生します。
このため、分解したタスクを「時間割」に当てはめてみることが必要となります。
仕事のプロセスを分解し、時間見積もりができたところで、次にやるのが、「時間割」に組みこんでいくことです。
私はずっと不思議に思っていたのですが、多くの人はスケジュールをアポイントや会議を中心に管理しています。たしかに、ブロックしなければいけない時間、という意味で、それは正しいやり方ですが、アポイントや会議の時間以外も、仕事のスケジュールなのではないでしょうか。
それ以外の時間を、どうしてアポイントや会議のように細かく設定しないのか。どの仕事をどの時間にやるのか、細かく手帳に書かないのか。
手帳は一時間単位で書けるようになっていますから、社内でデスクにいる時間、あるいはどこかで作業をする時間も、しっかりスケジュールとして組んでしまった方がいいと思うのです。
それこそ、外回りの人は会社に戻ってからの時間も一時間単位でスケジュールにする。ずっと内勤の人は、社内で何をするのかを一時間単位のスケジュールにする。
これが「時間割」です。
(上阪徹著『〆切仕事術』より P51~52)
「時間割」にすることで、仕事の進め方が本当に楽になります。なぜなら、「時間割通りに仕事を進めればいい」からです。上阪さんは、「時間割を作るメリット」を以下のように述べております。
「時間割まで作るなんて」と思われる方もおられるかもしれません。実は、ここがポイントです。時間割を作る理由は、時間割を作ったほうが、仕事がラクにできるようになるからです。なぜなら、時間割通りに進めればいいから。それだけで、〆切までのスケジュールを安心して完遂できるからです。
これが決まっていなければ、どうなるか。ざっくりした仕事時間で、ざっくりとした仕事をして、「あれ、時間が足りないぞ」なんてことになりかねない。
時間割は面倒に見えて、作ってしまうことで、自分がラクになるのです。しかも、あらゆる仕事について、やるべきこととスケジュールは時間割に委ねていますから、「〆切に間に合うだろうか」「大丈夫だろうか」「忘れていることがあるんじゃないか」というような気持ちになることもない。
仕事のスケジュールはすべて時間割に任せてしまい、仕事を離れた後も、安心して過ごすことができるのです。言ってみれば、秘書に予定を管理してもらっているようなものです。
(上阪徹著『〆切仕事術』より P54~55)
〆切にルーズな人は、人生もルーズになりかねない
本書を読んで、一番印象に残っているのが、以下の文章です。
独断と偏見で申し上げてしまうことをお許しいただきたいのですが、〆切にルーズな人は、人生もルーズになりかねないと私は思っています。
時間や約束を守ることができない。お願いされたことに応えられない。人に迷惑をかけていることに気づけない・・・・・・。こういうことを平気でしてしまう人が、果たして周囲から認められるかどうか。憧れたり、うらやましがられたりするかどうか。
たかだか仕事の〆切くらいで、と思われるかもしれません。しかし、実は小さな行動にこそ、人生は詰まっている、と取材で語っていた成功者は少なくありませんでした。
すべては日常に宿るのです。大事なときだけ、ちゃんとしていればいい、というわけにはいかない。日常のちょっとしたことが、人生の大事なときに出てしまうのです。
(上阪徹著『〆切仕事術』より P110)
上記の「小さな行動にこそ、人生は詰まっている」という一文に、すべてが集約されていると思いました。〆切は相手との約束です。約束を守れないということは、結局は信用を失うことにつながります。それが日常においてそうだとしたら……そう考えると、「小さな行動の積み重ねが、結局は人生をつくっている」のであり、「小さな日常の生活を大切にするからこそ、人生も充実する」と思ってしまうのです。
最後に
本書のポイントを上記にまとめてみましたが、いかがでしたか?
本書は「基本は〆切をテーマにした仕事術の本」ですが、「〆切を設定し、小さなことを達成していくことの積み重ねが人生に大きな影響を及ぼす」ことも説いております。
結局のところ、やらないといけないけれど、〆切が決まっていないことの連続こそが人生なのだと思います。
仕事と違って、誰も〆切設定してくれないのが人生です。このときに、自分で「いつやるんだ」と設定して進められるかどうか。
そのときどきにおいて、いかにうまく自分で〆切設定できるか。いろいろな物事に対して、いかに自分で線引きしてスケジューリングができるか。逆算して、今やるべきことを導き出せるか。
そういう意識を持っているかどうかで、人生は大きく変わっていくのです。
(上阪徹著『〆切仕事術』より P222)
人生には確かに〆切というものは存在しません。時間割をどのように組み立てるのかは、あくまで自分自身。そして、〆切を設定するのも、自分自身です。
僕はつくづく自分自身をみて思うのですが、「人間というものは、怠惰な生き物」です。何事も自由である方が楽だと思うのですが、逆に制約がないことにより、ズルズルと時間だけが過ぎ去っていくことになりかねない……一見不自由にみえるかもしれないが、多少制約があった方が、かえってより良い時を過ごせ、成果も出せるのではないのか?そのように思う時があります。
そういう意味において、”〆切”というのは一種の制約になります。しかし、”〆切”という制約を、何かを成し遂げるための「ステップ」ととらえるのか?それとも、自分自身を苦しめる「足かせ」ととらえるのか?この捉え方一つで、日常の仕事も、勉強などのプライベートの過ごし方も大きく変わるような気がいたします。
つまり、「〆切とうまく付き合うことで、仕事も人生も引き締まったものになる」ということです。
本書には、引き締まった仕事を進める、そして引き締まった人生を送るためのコツが書かれた本です。そして、それは著者が実践してきた、そして著者が多くの成功者とのインタビューを通じて培ったエッセンスが凝縮されております。
”〆切”というものをポシティブに捉え、本書に触れてみませんか?
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