【書評】マーケティング理論がコンパクトにまとまった”売る方法”の参考書!『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(永井孝尚著)

ビジネス書, マーケティング

今回紹介する本は『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(永井孝尚著)です。

 

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永井孝尚さんと言えば、まず思い起こされるのが代表作ともいえる『100円のコーラを1000円で売る方法』です。僕はこの本を読んで以来、永井さんのファンになりました。永井さんの本を読みながら、マーケティングの勉強をさせていただいているという感じです。

 

最近発刊された『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』も読んでみました。

”バリュー・プロポジション”、”ブルーオーシャン戦略”、”プロモーション戦略”、”マーケティングミックス”など、難しいマーケティング理論や戦略論などが世の中には出回っています。そして、これらを勉強しようと思って専門書を手に取っても、難解な用語と格闘しながらとなるため、なかなか理解が進みません。

 

ところが、本書はそんな難しい理論を日常出回っている商品やサービスを用いながらやさしく解説しております。そのため、僕も本書の書いていることを読んでいるうちに、「この理論のポイントはここなんだ!」とスッと入っていきました。

 

では、『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』は、難しいマーケティング理論や戦略論などをどのように解説しているのでしょうか?

以下に本書記載されている例を用いながら紹介していきます。

 

価格を間違えると会社は潰れる

価格の設定は難しいものがあります。特にライバル商品の価格が自分の商品の価格よりも安くなっていると、「お客さんがライバル商品に流れるかもしれない?」と不安になるものです。

しかし、価格競争を続けると、当然、利益は低下してしまいます。場合によっては「作れば作るほど赤字」という状況に陥るかもしれません。本書に登場している”行列のプリン屋さん”も「1個150円の美味しいプリンは開店早々に売り切れるヒット商品」にも関わらず、「作れば作るほど赤字になってしまう」状態でした。価格設定に問題があるためです。このため、プリン屋さんの店長はお店が閉店している間に宅配業者のトラックの運転手をして赤字を補てんしているという状況でした。

 

では、店長は価格の設定をどこで間違えたのでしょうか。本書では以下のように書かれています。

では店長はどこを間違ったかをチェックしてみよう。

店長は「150円で美味しいプリンを提供したい」と考えた。

次にこの価格から利益を引き、残ったコストでいかにプリンを作るかを考えた。店長はまずここで間違っている。

赤字になったということは、この段階ですでに利益を考えていなかったということだ。さらには自分の人件費を入れず、トラック運転手の仕事で生計を立てている。

本来は利益も自分の人件費を確保した上で、プリンを売るべきなのに、これができていない。つまり、価値基準型が破綻しているのだ。

だから休みも取れないほど忙しいのに、赤字続きの体力消耗戦に陥っている。

店長のような状況に陥っている会社は、日本では実に多い。「お客さんのため」と思ってひたすらコストを削減し、人件費も削り、安く売る戦略を取ったあげく、全然儲からないのである。

(永井孝尚著『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』より P90~P92)

 

赤字となれば会社の体力を確実に奪います。そして、最後は会社が潰れてしまいます。つまり、価格戦略を間違えると、「売っても儲からない」という状況につながり、「会社を潰す」という道につながってしまうのです。

本書では「価格を決める2つの方法」(①コスト基準型、②価値基準型)を示しながら、「行列のできるプリン屋さん」の例を用いながら、”いかに価格戦略が重要なのか?”という私たちが頭では分かっていても、つい見失いがちな戦略の重要性を伝えています。

 

プロモーション戦略の基本的な考え方とは?

私たちが商品やサービスを展開するにあたり、考えないといけない戦略の一つに「プロモーション戦略」があります。プロモーション戦略の成否により、展開する商品やサービスの周知、そしてお客様とのかかわりが大きく変わってしまうからです。

では、プロモーション戦略を考えるにあたり、重要な事項とは何でしょうか?本書では恋愛に絡めて以下のように説明をしております。

実はプロモーションとは、異性と付き合うきっかけづくりと同じである。

例えば高校生の頃、クラスでちょっと気になる異性がいた人もいるだろう。しかし話をしようにも、なかなかきっかけがつかめない。

私も高校生の頃、同級生の女子とお話しをしたのは、3年間でほんの数回だけだった。いま思い返すと、実に暗い高校生活だった。

では、どうすればいいのか。

方法はある。まず気になる相手のことを理解することだ。たとえば相手が何に興味を持っているかをさりげなく探る。そして何をすれば相手と話をするきっかけがつくれるかを考える。

(中略)

プロモーションも同じだ。異性と付き合うきっかけづくりと同様、プロモーションも、お客さんが商品に興味を持つきっかけや、お客さんと商品の関わりをより深めるきっかけをつくることが目的である。

(永井孝尚著『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』より P90~P92)

 

よくプロモーションというと、「カッコいい、目立った広告やプロモーションビデオ」のイメージがあるかと思います。しかし、プロモーションの成否は目立つだけでは決して成功を収めることができません。ターゲットとなるお客様にメッセージを伝えることができるかどうかが重要だからです。

本書ではこのことについて以下のように述べております。

プロモーションで陥りがちな落とし穴がある。「プロモーションでどんどん目立って、話題になろう」とばかり考えてしまうことだ。マーケティングの専門家でも「プロモーションは目立てばいい」と考える人は決して少なくない。

たとえば世間で大きな話題になるようなテレビコマーシャルや、すごいアクセス数を獲得するようなホームページをつくり、「目立って大きな話題になった。大成功だ!」と考えたりする。目立って話題になることは決して悪いことではないが、それだけでは成功とはいえない。

(中略)

はなまるの「他社期限切れクーポン作戦」も結果的には大きな話題になったが、そもそもの目的は大きな話題になることではない。「潜在客である女性に、はなまるに初来店してもらうこと」だ。そしてその目的を達成した。

だからプロモーションでは、まずメッセージを伝えるべき相手を決めた上で、「その相手には、このように思ってもらいたい」という目的を決めて、それを実現する方法を考えることだ。その目的を達成しない限り、いくら目立ってもダメなのである。

(永井孝尚著『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』より P90~P92)

 

いくら目立ったとしても「悪いイメージ」で目立っては目的を達成したとは言えないはず。伝えたいと思う相手にメッセージをきちんと伝え、目的を達成することがプロモーション戦略を考える上で重要となります。

 

最後に

冒頭にも書いた通り、僕は永井孝尚さんのマーケティングの本が好きであり、永井さんの本を通じてマーケティングの勉強をさせていただきました。最近発刊された本書も、期待に違わぬ内容でした。

上記では「価格戦略」「プロモーション戦略」の2つの戦略について紹介をさせていただきましたが、他にも「名前はよく聞くけど、よくわからない」という以下の戦略についても紹介しております。

  • 「バリュープロポジション戦略」と「ブルーオーシャン戦略」
  • 「顧客」と「ブランド」
  • 「商品戦略」と「顧客開発」
  • 「チャネル戦略」と「ランチェスター戦略」
  • 「マーケティングミックス(4P)」
  • 「イノベーター理論」と「キャズム理論」
  • 「マイケル・ポーターと5つの力」と「競争戦略」

なお、「バリュープロポジション戦略」については以下の記事もどうぞ!

http://manatake.net/connectmarketing/valueproposition-20161023

 

「マーケティングを勉強したいけど、理論や本に書かれている内容が難しい」と思う方にとって、本書は、これらの戦略のうち、「モノを売るために必要なエッセンス」を身近な物語を用いながら分かりやすく書かれています。本書に書かれているエッセンスをつかむことにより、モノを売るための考え方が変わること必然です。特に基本となるバリュープロポジションの考え方をとらえるだけでも、「商品、サービス」と「お客様」のとらえ方が大きく変わるはずです。

 

「モノがなかなか売れない」「自分たちのサービスをお客様に伝えるために何をしたらいいか分からない」といった”売る方法”について課題を持っている方にとっては、本書のエッセンスは大いに役立つはずです。

 

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まなたけ
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「ビジネス書のエッセンス」管理人。 1966年生まれ・秋田県出身。 システムコンサルティング会社では、顧客管理及び営業支援システムの企業への導入・運用サポートを担当。 趣味は読書とランニング。仕事の傍ら、読んだビジネス書の感想やおすすめポイントを紹介するビジネス書書評ブログを執筆。 また、Webライターとしても活動中!

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