【書評】男性は心して読むべし!女性を取り巻く価値観の変化を鋭く捉えた”刺激的”な本!『女子の生き様は顔に出る』(河崎環著)

2017年1月17日ビジネス一般, ビジネス書

今回紹介する本は『女子の生き様は顔に出る』(河崎環著)です。

 

 

著者の河崎環さんはフリーライターであり、新進気鋭のコラムニスト!教育、子育て、政治経済、時事問題、女性活躍など、幅広い分野で記事やコラムを書いておりました。

刺激的なタイトルである本書『女子の生き様は顔に出る』は、元々はプレジデントオンラインで連載の『WOMAN千夜一夜物語』のコラムを編集し、書籍化されたものです。

 

WOMAN千夜一夜物語』を見ていただくとわかるのですが、小気味よいリズムで日常生活のちょっとした体験から、その時に話題となっているテーマに結びつけ、読者が想定しない視点から文章を展開するというのが河崎さんの文章の特長です。

 

まずは、本書に掲載されたコラムのうち、印象に残ったテーマ、そして文章をピックアップ!そして、本書を読んだ感想を書きたいと思います。

 

子宮にまつわる話はなぜ”燃え”やすいのか

男性がタイトルだけを見ると「ドキっ!」としてしまいそうな”子宮”の話。

 

このコラムは、「男性と女性の間には”違い”がある」ことを、男性は絶対経験することのない”生理”を用いてスタートさせております。

地元のバーでビールを瓶から飲みながら「なあ、女なんて毎月生理で7日間も血を流し続けたくせに死なねえんだぜ。あいつらこの世のもんじゃねえよ、なっ」とクダを巻く男たちの姿が目に浮かぶようで、微笑ましい。それくらい男性と女性の間には機能上の違いがあるということだ。

(河崎環著『女子の生き様は顔に出る』より P25)

 

そして、その後、26歳の男性医師が結婚相談所で述べた「子どもは3人欲しいから、お相手の女性は26歳まで」という”理想の女性”を契機に「出産の大変さ」を独特の表現を用いて、「それを理解していない男性に向けた強烈なメッセージ」を放っております。

人1人生み落とすのがどれだけ母親の身を削るかという表現で、「一度の出産で骨一本失う」というのを聞いたことがあるだろうか。初産後すぐの女性に聞いてみるといい。彼女たちはみな、実際にやってみて初めて知ることばかり経験して、ショックを受けているはずだ。

だから、そういう女性の機能と、当事者たちの「身も心もグルグルになり、骨一本失う」作業である出産への理解なしに「子どもは3人欲しいから、若い女性を」と”所望”するのは、それこそ「産む機械」をカタログから選ぶかのような発想なのだが、まあ、そこは結婚が社会的契約として意味を最も強く持つ市場での話。お互いのニーズが合致するのならそれでいいだろう。

それにしても、生まれながらにして否応なくビルドインされた子宮を抱えて生きる女性たちのアイデンティティの葛藤の傍らで、健康な子どもを産める「だけ」の能力が無邪気にも市場価値として高値で流通するのを見ると、やっぱりそんな男性には「7日間流血しても死なずにいられるか、やってみる?」と嫌味の一つもいいたくなるのだ。

(河崎環著『女子の生き様は顔に出る』より P29~p30)

 

・プレジデントオンライン『子宮にまつわる話はなぜ”燃え”やすいのか

 

「『日本死ね』って本当に女性?」平沢勝栄議員は別の日本を生きているのだろうか

2016年の政治において、ニュースでもにぎわしている話題の一つに、「保育園を落ちた日本死ね!!!」という女性のブログがありました。

そして、この「保育園を落ちた日本死ね!!!」は国会でも取り上げられ、与野党の論戦の一つとしてニュースをにぎわせたことは記憶に新しいところです。

 

しかし、この「保育園を落ちた日本死ね!!!」のメッセージに対して、このテーマの本質を理解していない国会議員や区議会議員に対して、河崎環さんは以下のメッセージで鋭く斬っております!

「これ本当に女性の書いた文章ですかね」「言葉が日本語として汚い」「教育上の影響も懸念」-国会でのみずからのヤジを「『日本死ね!!!』という言葉の悪さ」のせいにして一向に議論の論点が合わず、視聴者から嘲笑を浴びた平沢勝栄議員や、「『保育園落ちた日本死ね!!!』は便所の落書き。東日本大震災の被害者に申し訳が立たない」と、待機児童問題と震災の喪失をごった煮するという論理破綻もはなはだしいブログで「理解力が低い」とネットで評され、小さく話題を提供した40代の男性杉並区議など。「この人たちは、保育園に入れるかどうかが、どれほど子育て中の働く父母にとって生命線であるかを本当にしらないのだろうなあ、そして”真に”怒れる女性と真正面から対峙したことがおよそないのだろうなあ」と不足に感じる。

(河崎環著『女子の生き様は顔に出る』より P80)

 

このコラムは「保育園落ちた日本死ね!!!」という話題からスタートさせ、「女性は何に怒りを感じているのか?怒りの本質は何か?」を鋭く展開しております。そして、それは政府が肝いりで進めようとしている”女性活躍推進”にも著者ならではの視点で、”ひと言”を申しております。

 

「小子高齢化で、女性も労働力に組み込まなければ、日本の労働人口が先細る」「日本は女性の地位が低いなどと、外圧もうるさいし」

-政治家が”女性活躍推進”を進める本当の理由はこの辺りにあり、決して女性たちの「働きたい」との思いや職業人としての矜恃を汲み上げたわけではない。彼女たちの意思本位で決められたとはとても言えない制度の中で、育児と会社勤めを両立させ、「育休世代」と呼ばれる働く母親たちは、十分素直に政策に従い、産後もすぐに社会復帰して、M字カーブの谷を上げようと寄与している。

政策が動かしている気になっている女性たちは、のっぺらぼうな”層”や”労働力の集合体”ではない。1人ひとりに人格があり、人生があり、職業人としてのスキルや専門性を持つ、複雑で深遠な人間なのだ。立派な一個の人格なんだよ、若い女だって。人間なのだから、何かのきっかけで暴発し得るエネルギーも、もちろん内包している。政治家のあなたたちが活躍させようとしているのは、あなたたちがにわかに信じられないような「死ね!!!」という言葉が内側から噴き出す強さと激しさを持った、現代の女性たちなのですよ。

(河崎環著『女子の生き様は顔に出る』より P82)

 

・プレジデントオンライン『「『日本死ね』って本当に女性?」平沢勝栄議員は別の日本を生きているのだろうか

 

 

最後に

 

実は、本書を読むキッカケとなったのは本当に偶然でした。

本書の編集者であるプレジデント社の編集者・WさんのFacebookに、下北沢の書店「B&B」で開催された本書の出版記念イベントが投稿されていたことです。「へえ~、面白そうなイベントだなあ!既に開催されたのか?行きたかったなあ!残念!」と思いながら、この投稿に対して”いいね!”をクリックしたのでした。そうしたら、この”いいね!”がキッカケに、その後、著者である河崎環さんとFacebookでつながることに!

 

実は、このときまで、著者の河崎環さんを知りませんでした。Facebookでつながったことをキッカケに、早速、プレジデントオンラインで連載されていた河崎環さんの『WOMAN千夜一夜物語』を拝見したのですが、衝撃を受けました!著者の日常の体験を契機に、今話題となっている社会の事柄などと結びつけ、ウィットの効いた文章で自分の主張を展開する文章力、そして論理の展開力!正直、「ここまで文章のうまい著者にはなかなかお目にかかることがない!」と思えるほどのコラムでした。

 

例えば、冒頭に書いた『子宮にまつわる話はなぜ”燃え”やすいのか』というコラム!

タイトルだけを見ると、一見、男性には関係のなさそうな話のように見えます。しかし、最後まで読むと、「これは河崎環さんの男性に向けた強烈なメッセージだ」ということに気づきます。

 

昨今、”女性活躍推進”の議論など、女性を取り巻く環境が大きく変わろうとしております。しかし、それを議論している、あるいは当事者として接している男性は、本当に女性が直面している状況を理解しているのだろうか…..僕は『子宮にまつわる話はなぜ”燃え”やすいのか』に書かれた「身も心もグルグルになり、骨一本失う」という表現を読んだとき、「女性の出産とは、こんなにも大変なものなのか?」と、ある意味”ショック”に近い衝撃を受けました。

 

もちろん、出産は男性は絶対できないものなので、そのような体験を理解することはできません。しかし、著者の視点を本書を通じて見ることで、40代~50代の男性が長年の生活の中でとかく忘れがちな「女性の価値観とはどのようなものか?」を感じる一端にはなるのではないかと思います。

 

日常生活と社会の話題を見つめる鋭い視点と、それを表現するウィットの効いた文章、そして、そこに描かれる著者の”女性の価値観”の文章を、我々男性は”絶対”に、そして”心して”読むべきです。

 

 

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まなたけ
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「ビジネス書のエッセンス」管理人。 1966年生まれ・秋田県出身。 システムコンサルティング会社では、顧客管理及び営業支援システムの企業への導入・運用サポートを担当。 趣味は読書とランニング。仕事の傍ら、読んだビジネス書の感想やおすすめポイントを紹介するビジネス書書評ブログを執筆。 また、Webライターとしても活動中!

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