【書評】「仕事復帰したいママ」の活用が経済成長のカギ!『あなたのキャリアはいつでも磨き直せます』(PRESIDENT WOMAN 2016年11月号)

2016年10月19日ビジネス書, 働き方

 

今回紹介する本は、『PRESIDENT WOMAN 2016年11月号』です。

 

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この時期、僕としては手帳の特集が気になるところで、本書を手に取ったのも「今年の手帳、どんなものだろう?」と思ったからでした。

 

しかし、今回紹介するのは手帳の記事ではなく、もう一つの特集『子育てから働く私に戻る日』に興味深い記事が掲載されていたからです。

それは、サイボウズ代表取締役社長・青野慶久さんとWaris代表取締役・田中美和さんの対談記事『あなたのキャリアはいつでも見直せます』です。

 

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サイボウズはキントーンなどの製品を世の中に送り出すITベンチャー。一般的にIT業界は「7K」(きつい、帰れない、給料が安い、規則が厳しい、休暇がとれない、化粧がのらない、結婚できない)と言われているほどネガティブなイメージがあります。その中で、同社は”働き方”を改革し、「働き方が選べる会社」としてIT業界内外から注目を集めております。

一方、Warisは総合職女性たちに「時間や場所にとらわれない働き方」を提供するために、登録者と企業の間で「仕事のマッチング」を行っている企業です。特に力を入れているのが育児休暇から仕事に復帰したいと考えている総合職女性への支援です。僕も同社代表取締役の田中美和さん、河京子さんとお話しをさせていただいたことがありますが、同社のコンセプトに大いに共感をいたしました。

 

”働き方”において各方面から注目を集めている2社を代表するお二方がどのようなことを述べているのか?

以下に本書のポイントをまとめながら紹介していきます。

 

ブランクがあるからこそ経歴上”プラス”になる

お二方の対談は、高いスキルがありながらも育児を理由に離職した”ブランク女性”が、いざ求職活動を行う際に「離職期間が長い」という理由でなかなか採用されない状況に対する疑問から始まります。

青野:経歴を見ても、そうそうたる企業で重要かつ責任のある仕事をなさってきた方ばかりで、能力も高い。他社でも引っぱりだこでしょうと思ったら、そうでもないそうですね。

田中:そうなんです。離職期間が数年あるというだけで書類選考の段階で落とされてしまうことがほとんどです。

青野:その判断がまったく理解できませんね。

田中:ブランクがある分、能力まで目減りするかのような印象を持つ人事担当者が多いのは残念ですね。

青野:いや、むしろブランクがあることは経歴上”プラス”になると僕は見ています。これは僕自身が子どもが生まれるたびに育児休暇を取ったり、短時間勤務を選択してきた経験から実感しているのですが、企業側が”ブランク”と位置付けている時間に、決して「何もしていない」わけではないんですよね。家事、育児、地域活動を通じて、”社会”を見て深く関わっている時間なんです。この「社会にコミットする経験」というのは企業にとってマイナスどころか、市場で勝つために絶対に必要な要素。なぜなら、企業の命題は突き詰めると「社会の問題解決」だからです。ずっと会社の中にいる人よりも、社会にコミットした経験のある人のほうがアウトプットは高くなると僕は思っています。

(『PRESIDENT WOMAN 2016年11月号』より P71)

 

採用活動が厳しい状況の中、これまで労働市場に組み込まれていなかった育児で離職したママたちの経験こそが「市場で勝つために必要な要素」として2人の認識が一致しております。

 

ダイバーシティの時代に求められる柔軟な対応力

なぜ育児や地域活動に携わってきたママたちが企業にとって強みになるのか?2人の対談の中で端的に表れているのが以下の田中さんの言葉ではないかと思うのです。

 

田中:今はどの企業でも、決まりきった正解の型があるわけではなく、混沌とした中からイノベーティブなものを生み出す力が問われる時代ですよね。その過程では、臨機応変に問題発見・解決ができる柔軟な対応力というものが求められる。仕事仲間も顧客も、多様なバックグラウンドを持つダイバーシティの時代でもあります。そこで発揮されるのが、育児や地域活動で得た柔軟な対応力だと思うんです。本当に複雑で混沌とした世界での問題解決能力を培ってきたのだと、見方を変ええていただきたいです。

(『PRESIDENT WOMAN 2016年11月号』より P72)

 

工業化社会においては決められた手順で効率よく多くの製品を生産することが求められました。しかし、今は今までにない”イノベーティブ”な製品やサービスを生み出すことが求められている時代です。そんな時代に求められる視点は、「私たちが生活をしていく中で、どのようなものがあれば役に立つのか?」という”生活者の視点”です。

そんな”生活者の視点”というのは育児や地域活動を通じて磨かれた”ママの視点”です。上記の田中さんの言葉は、それを端的に表した言葉だと思います。

 

謙虚な姿勢でのキャッチアップ力がブランク経験のある女性たちの最大の魅力

とはいえ、新たな職場で働くとなると、誰しもが不安に思うものです。そんなときに必要となるのが”キャッチアップ力”です。2人は「ハイキャリアで育児を経験してきた女性たちは、即戦力の経験を持ちながら、柔軟な吸収力も持ち合わせている」と評価しております。

 

青野:一番不安なのは「仕事の感覚を取り戻せるか」という点かもしれませんが、今回のキャリアママインターンの参加者を見ていて感じたのは、非常に”キャッチアップ力”が高いということです。中途採用の場合、ハイキャリアの方ほど「私はこういうやり方でやってきたから」と拒否反応を示す人が多いのですが、ブランク女性たちはとても謙虚な姿でキャッチアップしようとくださった。受け入れたり、上手に締めたりするのがうまい。即戦力につながる経験を持ちながら、柔軟な吸収力もある。人材としては大きな魅力です。

田中:そうなんです。その謙虚さがブランク経験のある女性たちの最大の魅力なのかもしれません。ブランク期間があるからこそ「働く喜び」を真っすぐに受け取ることができるし、本当に意欲が高い。

青野:そこに安心感があるんですよ。謙虚さがスピーディーなキャッチアップ力につながって、喜びながら働いてくれるのだから自然と成果も出る。何より会社の風土づくりにとてもいいと思っています。育児経験豊かな社員がいることで、例えば若い女性がワーク・ライフ・バランスで悩んだときの相談相手になってもらえる。多様なロールモデルが社内にいることは、全体の離職率低下につながるはずです。

(『PRESIDENT WOMAN 2016年11月号』より P73)

 

このように、2人は”ブランク女性”に対する高い評価を述べた後、仕事への復帰を目指す女性たちに以下のようにエールを述べて対談を終えております。

 

青野:育児や社会に深くコミットした経験を強みととらえて、自信を持って一歩を踏み出してください。働き方あ根底が変わっていくこれからの時代、主役となるのは女性です。一緒に頑張りましょう。

田中:気になる業界のニュースを検索してみる、新聞を読むといった小さな一歩からビジネススキルを磨き直しはできると思います。家族を味方につけながら、少しずつアクションを始めてみてください。応援しています!

(『PRESIDENT WOMAN 2016年11月号』より P73)

 

最後に

日本の企業の場合、人材の採用においては「仕事の経験を積めば積むほど、経験に応じて成長が比例し、より早く効率よく仕事をする」といった工業化社会に企業内部に培われたの”信仰”のようなものがはびこっているように思います。どんなにキャリアを積んでいたとしても、育児などで一度離職をしてしまうと「今までのキャリアがゼロクリアされてしまう」といった企業の認識があるためか、いざ「子供が手がかからなくなってきたので、そろそろ仕事に復帰し、キャリアを重ねていこう」と思っていても、企業から色よい返事をもらえないというのが現状です。

 

しかし、「工業化社会で培われた常識や信仰が通用しない」時代となっております。そして、”脱工業化社会”が進むにつれ、求められる人材も大きく変わってまいりました。特に近年は、対談の中でも述べられているように”イノベーティブなものを生み出す生み出す力”が各企業に求めらえています。この”イノベーティブな発想”は「今までの経験の延長線上で考える能力」ではなく、「自分たちの悩みを柔軟に捉え、臨機応変に対応できる能力」が求められます。そのために必要なのは”生活者の立場として世の中を捉えることができる視点”です。これは普段の仕事だけで養うのは難しく、育児や地域コミュニティの中での交流など”仕事以外での生活の経験”が必要となります。育児経験の経験を持つ女性の視点は”生活者視点”という強みを持っている方が多いです。

 

現在の労働市場を見ていると、企業側もなかなか思うような人材を採用できないのが現状です。その一方で、「即戦力となるようなスキルを持った人材がいるにも関わらず、企業が見向きもしない」といった現状があるのかなという気もしております。今回のサイボウズ代表取締役社長・青野慶久さんとWaris代表取締役・田中美和さんの対談記事での指摘は、「労働市場に組み込まれていない女性たちを優秀な人材として評価することで、企業の戦力となりうる」ことを提案しているように思えます。

 

そして、「労働市場に組み込まれていない女性たちを優秀な人材として評価することで、企業の戦力とする」ことができれば企業の成長につながることはもちろん、それが日本全体に広がれば、日本の経済成長にもつながります。今後はますます少子高齢化社会となり、それに伴い労働人口が低下していきます。企業にとっても働き手の確保は企業にとっても大きな経営課題であり、これが日本全体の課題にもつながっていきます。安倍内閣でも「女性の活用」が政策の一つとして挙げておりますが、今後の経済成長を見据えたとき、”女性の活用”が日本の今後の経済成長のためのカギの一つとなるはずです。

 

なかなか一朝一夕では企業は社会の状況は変わらないかもしれませんが、サイボウズやWarisのような働き方に関する発信が多くの方に触れるにつれ、仕事に復帰したいと思うママを取り巻く労働環境が変わることを願っております。

 

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まなたけ
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「ビジネス書のエッセンス」管理人。 1966年生まれ・秋田県出身。システムコンサルティング会社では、顧客管理及び営業支援システムの企業への導入・運用サポートを担当。趣味は読書とランニング。仕事の傍ら、読んだビジネス書の感想やおすすめポイントを紹介するビジネス書書評ブログを執筆。ランニングではサブ4(フルマラソン4時間以内での完走)を目指してトレーニング中。

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