【書評】「読書とは何か?」を読者にその意味を問いかける本!『読書という荒野』(見城徹著)

読書術

久しぶりに言葉に圧倒された本を読んだ。

その本とは『読書という荒野』である。

著者は幻冬舎社長の見城徹氏。角川書店時代には林真理子、村上龍、山田詠美といった時代の寵児となる作家を見出した編集者でもある。また、近年はベストセラーとなった石原慎太郎が田中角栄の生涯を書いた『天才』を世に送り出している。

 

そんな著者が書いた本書は、著者が自分の人生を振り返り、本との出会いや多くの作家との出会いを邂逅しながら自らの読書観を述べた本である。

 

「自己検証・自己嫌悪・自己否定」を通じて読書は人生を切り開く

著者の読書観を端的に表すと、本書の最後に書かれている以下の文章に集約される。

さて、ここまで読書について、そこから獲得する言葉について、そしてその言葉を駆使する思考について書いてきた。何度でも書くが、正確な言葉がなければ、深い思考はできない。深い思考がなければ、人生は動かない。

自己検証する。自己否定する。それを、繰り返し、繰り返し、自己嫌悪との葛藤の末に自分の言葉を獲得する。その言葉で、思考して、思考して、思考し切る。その格闘の末に、最後の最後、自己肯定して救いのない世界から立ち上がる。認識者から実践者になる。暗闇の中でジャンプする。人生を切り開く。

読書はそのための最も有効な武器だ。

(見城徹著『読書という荒野』P236)

自己検証・自己嫌悪・自己否定

特に、本書のキーワードとなっているのが「自己検証・自己検証・自己否定」だ。

著者は冒頭で「自己検証、自己嫌悪、自己否定の三つがなければ、人間は進歩しない」(P5)と言っている。また、読書を通じて自己検証、自己嫌悪、自己否定を繰り返し、自分を向き合うからこそ、現実世界で戦うことができるという。

そんな見城氏が「自己検証・自己嫌悪・自己否定」の概念を実感したのが、文豪・夏目漱石の『こゝろ』だ。人間形成という意味での著者の読書体験は、この作品からスタートしている。

 

著者の人生に影響を及ぼした吉本隆明

そして、著者の人生において強く影響を及ぼしたのが吉本隆明の作品だ。

吉本隆明は思想家として活躍した。特に1960年代、発表された詩や批評は学生運動の活動家に多大な影響を与え、心の依りどころとなっている。
そんな彼の作品の中でも著者が特に影響を受けたと述べているのが『転位のための十篇』であり、『マチウ書試論』である。

著者は「40年間『転位のための十篇』だけは、週に1回は読み返しす」と、また、『マチウ書試論』については「僕の血と肉」と述べている。

P56〜P65には、著者が考える『転位のための十篇』や『マチウ書試論』の作品の素晴らしさが書かれているが、この文章からも、いかに著者がこれらの作品に傾倒しているかが窺い知れる。

『転位のための十篇』は全編を通じて、吉本の心の痛み、切なさが表現されており、ヒリヒリとしたリアリティを感じる。だからこの詩を読むことで、僕はいつも絶望から立ち上がる力が湧いてくる。

(見城徹著『読書という荒野』P60)

 

 

知識を積み重ねてもしょうがない?

そんな本書の中で僕にとって衝撃的な言葉があった。それは以下の言葉だ。

経営者やビジネスパーソンのなかには、「自分は読書家だ」と自負していても、話にまったく深みのない人がいる。読書を単なる「情報取得の手段」として捉え、ビジネス書や実用書ばかりを読んでいると、こうした状況に陥りがちだ。

(見城徹著『読書という荒野』P15)

 

自分で言うのもなんだが、この指摘は的を得ていると思う。

確かにビジネス書には著者が獲得したノウハウが書かれている。そして、そのノウハウを読むと、「自分もできるかもしれない」と思ってしまう。

しかし、大事なのは、自分が「こうなりたい」と目指していることを実現するためのプロセスにある。多くのビジネス書には結論しか書かれていない。ビジネス書に書かれていない、その裏にあるノウハウを獲得するための格闘したプロセスこそ重要なのだ。どうやったらそのノウハウを獲得できるのか?その格闘している様子を想像するからこそ、ビジネス書を読む楽しさがあると思う。

ビジネス書や実用書には「結論」しか書かれていない。本来、優れたビジネス戦略の裏には、当事者が胸をかきむしりながら思考し、汗と血を流しながら実行するプロセスがある。理論やノウハウではない人間の格闘がある。しかし多くの場合、そうしたプロセスは十分には表現されず、成功体験だけが、方法論の形をとって描かれている。そのままなぞっても、自分が同じに再現できることなどないだろう。

もちろん、仕事のために必要な情報を本から取得するのは悪いことではない。しかし、僕が考える読書とは、実生活では経験できない「別の世界」を経験し、他者への想像力を磨くことだ。重要なのは、「何が書かれているか」ではなく、「自分がどう感じるか」なのである。

(見城徹著『読書という荒野』P15)

 

 

この言葉は「読書とはこういうものだ」と、僕を含めた読書を行う者に叱咤激励をしているように思う。本書は読書をする人間にとって、「自分にとって読書とは何か?」と自分の読書観を確認するためにも、是非とも読むべき本に思う。

 

今回紹介の本

目次

  • はじめに
  • 第1章 血肉化した言葉を獲得せよ
  • 第2章 現実を戦う「武器」を手に入れろ
  • 第3章 極端になれ!ミドルは何も生み出さない
  • 第4章 編集者という病
  • 第5章 旅に出て外部に晒され、恋に堕ちて他者を知る
  • 第6章 血で血を洗う読書という荒野を突き進め
  • おわりに

 

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まなたけ
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「ビジネス書のエッセンス」管理人。 1966年生まれ・秋田県出身。システムコンサルティング会社では、顧客管理及び営業支援システムの企業への導入・運用サポートを担当。趣味は読書とランニング。仕事の傍ら、読んだビジネス書の感想やおすすめポイントを紹介するビジネス書書評ブログを執筆。ランニングではサブ4(フルマラソン4時間以内での完走)を目指してトレーニング中。

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Posted by まなたけ


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