【書評】「自社らしさとは何か?」を考えること!それが戦略を立てる上で一番重要なこととなる!『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』(永井孝尚著)

ビジネス書, マーケティング

2016-08-28 00.43.35

 

夏休みに『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』(永井孝尚著)を読みました。

 

大ヒットとなった『100円のコーラを1000円で売る方法』シリーズの後継として出版された本書。以前から「読みたい!」と思っていたのですが、なかなか読めず。地元の図書館でたまたま見つけた本書を手に取って読んだのですが、非常に面白かったです。

 

特に、「1杯のコーヒーを売るために、いろいろな戦略が隠れている」ということを本書を通じて理解することができました。

 

では、「1杯のコーヒーを売るために隠れている戦略」とはどのようなものか?そして、本書のテーマである「”バリュープロポジション”の考え方」とは何か?

 

ポイントを以下にまとめながら、本書を紹介したいと思います。

 

ドトールの本当の勝因は「低価格戦略」ではない

ドトールというと1杯が220円という低価格のコーヒーが売りです。

 

ドトールコーヒーが登場した1980年当時、喫茶店のコーヒーは1杯300円から400円が相場でした。そんな中、ドトールコーヒーの創業者である鳥羽博道氏は「1杯150円なら毎日飲んでくれる」と考え、ドトールコーヒーを始めました。

 

当時の相場の半額という”常識破り”の1杯のコーヒーの提供。低価格と聞くと「コーヒー豆も安いのではないか?」と思いがちですが、ドトールのコーヒーは低価格であっても非常に美味しい!それもそのはずで、ドトールはコーヒーの品質には妥協していません。原価もそれなりにかかっているはずです。

 

しかし、企業である以上、利益を出さなくてはなりません。では、ドトールは利益を出すために、どのような戦略を取ったのでしょうか?

 

ドトールの戦略の基本な考え方は「通常のお店の半額で、通常のお店より4倍の顧客数に来店してもらい、通常のお店の倍の売上をあげる」というものでした。

 

とはいえ、通常の4倍の顧客数に通常のお店と同じ人数のスタッフで対応するのは今までと同じやり方では到底無理!では、どうすればいいのか?

 

ドトールがその課題に対応するために行ったのは、自動コーヒーマシン、自動食器洗い機、自動パン焼き機を導入することで、徹底的にオペレーションを省力化したことでした。

 

この事例で学べることは「何を加え、何を捨て、何を増やし、何を減らすかを明確にしなければならない」ということ!ドトールコーヒーでは「基本となるコーヒーの品質を高めて多くの顧客に来店してもらうこと。その代わりに顧客にセルフサービスを行ってもらうこと、そして徹底的な機械化でコストを削減した」こと。そうすることで、ドトールは1杯150円のコーヒーという”ブルーオーシャン”のマーケットを手に入れたのです。

 

 

「コーヒーの香り」を失ったスタバが考え続けたこと

「サードプレイス」というコンセプトを打ち出し、多くの顧客から支持をされているスターバックス。重厚で豊かな香りのコーヒーのにおいが店内に溢れる中、多くの顧客が「くつろぎの場所」として利用しております。

 

しかし、そんなスターバックスも2007年~2008年には経営危機に陥りました。

 

当時、スターバックスは売上アップのためにチーズ入りサンドイッチを温めて出しておりましたが、チーズの強いにおいがコーヒーの香りを台無しにしました。また、研修不十分なバリスタが顧客に溢れるようになり、はっきりと味が落ちたことが消費者レポートで現れるようになりました。

 

創業者のハワード・シュルツ氏がCEOに復帰。シュルツ氏は、スターバックスの低迷は「成長と効率化を追求するあまり、スタバの魅力が失われた。そのため顧客が去り、スタバは低迷した」と考えました。そのため、全米7100店舗を半日一斉に閉店してバリスタの再研修を行うなど、スタバらしさを取り戻すため、矢継ぎ早に手を打っていきました。

 

この事例での大きなテーマとなっているのは「スタバらしさとは何か?」ということ!そして、本書で大きなテーマとなる「ドリームコーヒーらしさとは何か?」ということにつながっていきます。

 

この「~らしさ」というのは「強み」という言葉に置き換えることができます。「強さ」がしっかりしていないと、やはりお客様には「その企業が持つ独自の価値」というものは伝わりません。伝わらないとどうなるのか?他のライバルとの違いがハッキリとしなくなるため、「差別化できるものは価格」となってしまい、どうしても価格競争に陥ってしまいます。

 

そういう意味で、「”自社らしさ”を追求する」ということは、非常に大きな意味を持ってまいります。本書で何度も「ドリームコーヒーらしさとは何か?」を繰り返して問いているのは、「その企業が本当の意味で強くなるポイントがここにある」という意味を持っているからだと思います。

 

お客はカフェの「何に」お金を払うのか?

8杯目には『お客はカフェの「何に」お金を払うのか?』というテーマで書かれています。本書の中で、「自社らしさは何か?」という問いとともに、大きな意味を持つのが、『お客はカフェの「何に」お金を払うのか?』という問いだと僕は考えます。

 

では、この『お客はカフェの「何に」お金を払うのか?』という問いは、どのような意味があるのでしょうか?それは、「この商品の本当の価値は何か?」という問いにほかなりません。

 

本書では、スポーツクラブの例を用いて、この問いを説明しております。具体的に見てみましょう。

 

「スポーツ施設は『製品の実態』にすぎない。実際にスポーツクラブに行くとわかるが、都心の一部の店舗を除けば、顧客の多くは60代の団塊の世代だ。彼らは健康で若々しいライフスタイルを求めている。つまり彼らにとって、スポーツクラブの『製品の中核』は健康で若々しいライフスタイルを獲得することだ」

 

「そのために、お客様はお金を払っているのですね。なるほど」

青葉は1人で納得したようだった。

 

「一番外側の円は『製品の付随機能』で、完全な価値を提供するために必要なものだ。団塊の世代に対して、健康で若々しいライフスタイルを獲得することという『製品の中核』を提供するためには、スポーツ施設を提供するだけでは不十分だ。たとえば、健康維持のためのマンツーマン指導や、高齢者向けのトレーニングを提供しなければ、顧客満足は得られない。若い人向けのトレーニングメニューではついてこられない人も多いからだ。他の例をあげると、電気製品では品質保証や修理サービスなども『製品の付随機能』と言える」

(永井孝尚著『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』より P176)

 

最後に

最初にも書いた通り、本書は『100円のコーラを1000円で売る方法』シリーズの後継として出版された本です。

 

100円のコーラを1000円で売る方法』では「顧客が本当に必要とする価値を創造することの大切さ」、そして「バリュープロポジションの考え方」と説いた内容ですが、「それを具体的にどのように行えばよいのか?」という声にこたえた内容が本書という位置づけです。

 

ドトールコーヒー、セブンイレブン、マクドナルド、スターバックス、ネスレなどの企業の事例を用いながら、ドリームコーヒーという架空の会社で働く主人公の新町さくらと上司であるスペシャルプロジェクト室室長の藤岡とのやり取りを通じて、ドリームコーヒーの戦略を構築していくというストーリーです。

 

そんな本書の中で、戦略を考える上で重要な問いとなっているのが「自社らしさとは何か?」です。

 

では、なぜこの問いが重要なのか?著者はあとがきで以下のように述べております。

お客様からは、「バリュープロポジションをつくるときに最初に考えるのは、自社か?顧客か?」という質問をよくいただきます。「顧客中心主義だから顧客から考えるべき」と考えがちですが、本書で繰り返し述べているように、最初に考えるべきは「自社らしさ」です。自社の強みに徹底的にフォーカスすることから始めます。そうしないと、たとえ顧客のニーズをつかまえることができたとしても、すぐまねされたり、差別化できないのです。

(永井孝尚著『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』より P238~P239)

 

「自社らしさ」、そして「自社の強み」が明確にできないと、どのようになるのか?そこに待ち受けているのは”価格競争”です。「差別化できるのは価格のみ!」という状況に陥るため、最終的には”体力勝負”となってしまいます。利益を上げることが難しくなり、消耗戦となるため、経営危機に陥る可能性もあります。そのため、「自社らしさ」「自社の強み」を明確にすることが戦略の成否のカギを握るといっても過言ではありません。

 

しかし、この問いに対して答えを見つけるのはなかなか容易ではありません。意外と「自社らしさ」「自社の強み」を知っているようで、知らないことが多いからです。また、仮に知っていたとしても、頭の中でぼんやりとしているものであり、これを言語化・明文化するのに一苦労ということが多々あります。

 

とはいえ、「自社らしさ」をはっきりと明確化できたとき、それを顧客にメッセージとして伝えるのは非常に容易になります。そして、そのメッセージに共感するからこそ、自社のファンとなり、そしてそれが最終的には売上につながっていくのです。

 

そういう意味でいうと、本書の「自社らしさとは何か?」というメッセージは、私たちに「自分たちがなぜ存続しているのか?どのような使命を持っているのか?」という根源的な問いかけをしているように思えます。そして、それは企業の存在意義を問いかけることにも通じるのです。

 

そんな根源的な問いかけに対して真摯に向き合い、そして自分たちの強みを掘り下げ、明確化することで、本当の強さは生まれてくる。本書は私たちに「戦略を考える上で、一番重要なことは何か?」を示しているように思える本です。

 

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まなたけ
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「ビジネス書のエッセンス」管理人。 1966年生まれ・秋田県出身。システムコンサルティング会社では、顧客管理及び営業支援システムの企業への導入・運用サポートを担当。趣味は読書とランニング。仕事の傍ら、読んだビジネス書の感想やおすすめポイントを紹介するビジネス書書評ブログを執筆。ランニングではサブ4(フルマラソン4時間以内での完走)を目指してトレーニング中。

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