【書評】「サメってこんなに奥深い生き物か」と知る驚きの本!『ほぼ命がけサメ図鑑』(沼口麻子著)
いきなりですが、実はサメってここ3~4年でじわじわと人気になっていたって知っていますか?
芸能人でも、ココリコの田中直樹さんやきゃりーぱみゅぱみゅさんはサメ好きを公言しております。
中にはこんな商品も!
『乃木坂46 西野七瀬愛用 サメのぬいぐるみ コケタニ君 キーホルダー』
そんな中、サメの魅力が詰まった本が発売されました。
世界でただ一人のシャークジャーナリスト・沼口麻子さんが書いた『ほぼ命がけサメ図鑑』(講談社)です。
実は著者の沼口麻子さんとは彼女がシャークジャーナリストになる以前からの知り合いです。僕は普段は動物に関する本を読むことはないのですが、シャークジャーナリストになって約6年、沼口さんが初めての著書を出版されたのを機会に読んでみました。そして、読んでみたら、そこには今まで僕が知らないサメの世界が広がっていました!
知り合いであるということを除いて読んでも、お世辞抜きで非常に面白い本でした!
本書の紹介にあたって、本書のおすすめポイント、本書を読んだ感想を以下に掲載いたします。
Contents
今回紹介の本
目次
- はじめに サメの「甘噛み」
- 第1章 サメのよろず相談室
- 第2章 わたしの体当たりサメ図鑑
- 第3章 わたしの世界サメ巡礼
本書のおすすめポイント
本書を読んで分かること!
- サメに関するさまざまな「誤解」や「偏見」を解く知識!
- 22種類ものサメ図鑑!
- サメ巡礼を通じて知るサメと人間とのかかわり!
- サメを通じて考える環境問題!
気になったところ
「人食いザメ」はいない
サメというと、どうしても「人食いザメ」というイメージが強いですよね!
しかし、沼口さんは「サメが好んで人を食べるということはありえない!」と言い切ります。
事実としてサメに襲われ、不幸にも亡くなってしまうことは確かにおります。ただ、サーフボードがサメの好物であるアザラシややウミガメそっくりに見える、潜水魚で潜水夫が持つ漁獲物のにおいがサメを引き寄せるなど、偶然が重なり起きてしまうものだと述べております。
ひとくちにサメといっても500種類以上があり、中にはジンベイザメのようにプランクトンを食べて生きているものもあります。また、人を襲うサメというのはごくわずかです。
そのため、「サメ」と聞くだけで「人を襲うモンスター」と連想するのは誤ったイメージだと沼口さんは強く述べております。
「チョウザメ」「コバンザメ」はサメではない!
「キャビア」はチョウザメの卵ということは有名な話ですよね?
しかし、このチョウザメ、「サメ」という名前がついているからサメの仲間だと思っていたのですが、実はサメではないのです!
チョウザメというのはシーラカンスと同じ「古代魚」の一つなのです!
そして、本書に書かれている「サメという名前がついているけどサメではない生き物」として、もう一種類紹介されておりました。
それは「コバンザメ」です。
コバンザメはスズキ目に属する魚です。
サメという名前がついていてもサメではない生き物がいるなんて”ビックリ”ですよね?
日本ではサメは昔から身近な生き物
実はサメというのは日本では昔から身近な食べ物なのです。
例えば山陰地方ではサメのを「ワニ」と呼び、「ワニ料理」としてサメ肉を使った料理を食べております。
また、サメ皮は昔は日本刀の柄の部分に、そして今でもわさびをおろす鮫皮おろしとして使われております。
そして、栃木県や宮城県気仙沼市ではサメ肉が学校給食として出ているのです。
サメってこんなにも日本人になじみの深い生き物なのですね!
最後に
それにしても本書はボリューム満点の本でした。
なにせ総ページ数が381ページもあるのですから!
しかし、それだけ沼口さんのサメに対する豊富な知識と体験、そして愛が詰まった本だと言えます。
例えば、第1章「サメのよろず相談室」に書かれているのはサメの生態系に関するさまざまなお話です。「気になったところ」に書いたお話も、主に第1章からピックアップいたしました。
他にも、
- サメの歯は何度でも生え変わる
- サメは魚なのに交尾する
- サメには2本のおちんちんがある
- 川(淡水)にも大きなサメがいる
といったちょっと驚きの内容が!
また、サメと会いに全国各地はもちろん、世界各地にも旅立ち、そこで見た聞いたサメに関するお話が本書には書かれております。
- 横浜中華街で食した1杯4万5000円の超豪華フカヒレラーメン
- 青森県にあるアブラヅノサメの蒲焼き
- アラブ首長国連邦のドバイで食したホコサキのフライ
- 日本一のサメ肉消費地である新潟県上越市の年末年始
- サメの水揚げ日本一の地、宮城県気仙沼市でヨシキリザメを堪能
- ダイビングの世界的聖地でシュモクザメの群れを見る
- etc…….
その一方でフカヒレにまつわる問題提起も本書では行っております。それは「フィニング」についてです。
フィニングとはサメを捕獲してヒレだけを切り落とし、それ以外の魚体を海洋投棄することです。実はサメにはうきぶくろがありません。そのため、サメからヒレを取ってしまえばサメはまともに泳ぐことができず、深海に沈んで死んでしまいます。
フカヒレを取るためにサメを捕獲し、サメを死に至らしめること。これはサメの個体数の減少につながり、ひいては生態系を壊すことにつながると本書で警告しております。
そんな中で以下の文章が印象に残りました。
一方で人間は、生き物を食べなければ生きていけません。ですから、正当な「漁獲」を否定する理由はどこにもありません。ただし、それが行きすぎれば「乱獲」となり、生態系を壊しかねません。
ヒトが生きていくための営みと、ヒトも地球上の一生物であることのバランスを取り、生物を乱獲することなく、生態系を壊さない範囲でいかに命をいただくか-サメとの関わりだけでなく、みんなが考えていかなければならない大きな問題だと思います。
『ほぼ命がけサメ図鑑』(沼口麻子著)P61より
本書を読んで感じるのは沼口さんのサメに対する愛です。そんな本書を通じた沼口さんのメッセージは「読み進めてシャーキリビリティを高めてほしい」というひと言に尽きます。シャーキリビリティとは「サメに対する知識や熱い気持ち」を表した沼口さんが作った造語です。
それにしても、サメの生態系から日本人とサメとの関わり、またサメを取り巻く問題など、本書を読むと「サメってこんなに奥深い生き物だったのか?」と本当に思えてしまいます。
いや~、勉強になりました!
なかなか普段は「海水浴場でサメが現れた」というニュース以外は触れる機会の少ないサメに対して、本書を通じて「シャーキリビリティ」を高めてみませんか?
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